からだの仕組みやその働きを基礎的な医学の知識とともに丁寧にわかりやすく解説しています。
皆さん、おはようございます。
わたくしは、この講義を担当させていただく『イアトリズム学院』学長の「イアト」です。
どうぞ、よろしくお願い致します。
さて、本講義は《基礎医学を学ぼう!》と銘打ちまして…
骨や筋肉・内臓・神経など、人間の身体の仕組みとその働きや役割つまり「解剖学」や「生理学」といった医学の基礎的な知識を簡単に解りやすく解説させていただく授業となっております。
さて、それではご一緒に自分とはどのようなものなのかを知るための「自分探しの旅」完全なる秩序に守られた美しき小宇宙『人体』の中へと旅立ちましょう!
自然界に存在する全ての生物が示す生命の営み、それこそが38億年もの長きに渡って引き継がれてきた『生命現象』と呼ばれるものなのです。
そしてその営みは、摂取・分解・合成・活動・排泄、という極めて単純なもので、それ以外に成長と増殖を行って種の保存をはかるということをしています。
そしてアメーバのような単細胞生物は1個の細胞の中で全ての生命現象を営んでいますが、私たち人間を始めとする多細胞生物は様々な種類に分化した細胞や器官が互いに協力し合いながら1つの個体として『生命現象』を営んでいるのです。
でも、大自然の中において生物は、そのものだけで存在しているのではなく、その生命を取り巻く環境は常に変化し続けています。
気温・湿度・天候、時には黄砂や大気汚染、また突然ウイルスや細菌の侵襲を受けるかもしれません。
そこで生体は、その環境の変化に対応し生命を維持するシステムとして『ホメオスタシス』という機能を先天的に備えているのです。
ある意味、この地球という惑星の生命が生きていられるのは、恒星である太陽が常に変わらず安定したエネルギーの恵みを与え続けてくれているからと言えるでしょう。
恒常性とも表現される『ホメオスタシス』は、その名の通り恒(つね)に常(つね)である性質であり、太陽がいつも恒常性を保っているために地球がずっと安定した状態で在り続けられるように私たち生命体の内部環境を守り続けてくれているのです。
では「恒に常である性質」とは、どのようなものなのでしょう。
生理学において『ホメオスタシス』という言葉の語源はギリシャ語で同一という意味の「HOMEO」と状態をあらわす「STASIS」という言葉が合わさって出来た合成語です。
同一の状態とは常に同じであるということですが、それは固定的なものではなく、ある一定範囲をもって一番安定した状態に調整されることを意味しているのです。
すなわち『ホメオスタシス』とは、生体が外部から独立して外部の環境に左右されることなく、内部環境をある範囲内に維持するメカニズムというわけですね。
そして、その恒常性を主に担っているものが「自律神経系」であり「内分泌系」および「免疫系」と互いに協力し合いながら、私たちの知らないところで休むことなく生体機能の調整をしてくれているのです。
さて、それではここからは『人体』を一つの国に見立て、その国を治めるトップが誰なのか、また国内はどのようなシステムによって機能し、守られているのかを一緒に楽しく見てまいりましょう。
約60兆個にもおよぶ細胞で構成される私たちの身体は、それぞれ役割別にチームを組み、互いに協力し合いながら、その生命の維持に務めています。
いくつかの細胞の集合体である「組織」は、一定の配列のもとに組み合わされて一つの機能を営む「器官」を構成し、また各器官はその仕事をスムーズにおこなうために「器官系」を構築します。
そして、その各器官系がそれぞれ協調的に機能することにより人体が成り立っているのです。
人体を国に例えるなら、その最小の単位である細胞は、一人一人の「国民」に相当します。
そして、それを絶対君主制を施いて支配するのが「脳」、すなわち『皇帝ブレイン』です。
脳を専制君主とするその国家は、国そのものである自身を機能させるため、国の機能を幾つかの「省」に分け、その下部機関とともに様々な役割を担わせています。
そしてそれが〈器官系〉および〈器官〉というものなのです。
国土交通省が、その各部局に道路や海運・航空の円滑な運行を管理させるように〈器官系〉の一つである循環器系と、それに所属する〈器官〉である動脈・静脈・リンパ管などは、血液や組織液を滞りなく流れるように機能しています。
また、防衛省が所管する自衛隊が他国からの攻撃を監視・防衛しているように、免疫系である脾臓やリンパ節は、白血球やリンパ球を産生し、細菌やウイルスを迎撃しているのです。
そして、その各々の〈器官〉は、国民である〈細胞〉一つ一つが集まって作る〈組織〉により構成され、国民の一人一人が『人体』という国を守り、発展繁栄させると同時に自国の安寧を保つため、皇帝の命令に忠実に従い、日々働き続けているのです。
それでは、ここからは『人体』いう国の政府が、どのような機関により構成されているのかを順に詳しく見ていくといたしましょう。
専制国家『人体』を構成する政府の機関は、分類の仕方にもよりますが皇帝ブレインのもと、12の省に分けられています。
そのうち「神経系」「内分泌系」の2省は、皇帝の直属機関として他の省を掌握し、皇帝からの命令を迅速に、また長期的に伝えるとともに、国内外の情報を皇帝に伝達する働きを担っています。
特に神経系は、神経組織・筋組織・上皮組織・結合組織という国民を構成する4種族のうち、皇帝ブレインとその妻スパイナル(脊髄)の出身種族である神経組織により構成されているため、国政の最も要職にあると言っても良いでしょう。
また内分泌系は、生体機能を調整する働きなどをしています。
残りの10省については、各省およびその下部組織であるそれぞれの各部局が互いに連携を持ち、サポートし合いながらいろいろな仕事をこなしています。
国外環境の情報をそれぞれ特徴的なセンサーで感知し入手する省は目や耳・鼻などの「感覚器系」。
国土の基礎を形作るとともに、その領土を守るため国境線に内外を隔てる厚い壁を築いているのは「骨格系」「筋肉系」「外皮系」の3つの省。
大気汚染や公害対策に積極的に取り組み、国内環境の維持を担っているのが「呼吸器系」と「泌尿器系」という2つの省。
国内交通の維持・管理、および国内各所への物流全般にわたる仕事を請け負っている省は「循環器系」。
全国民の消費する様々な食品や栄養を外部から調達し、加工・保存・供給する省が「消化器系」。
そして様々な外敵から国土と国民を守る重要な国防は「免疫系」という省が担っています。
また「生殖器系」は、他国との外交を通じ、多くの同盟国を作る仕事をする省というわけです。
如何ですか、皆さん。
『人体』が本当の国のように組織され、機能しているということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
では、ここからは皇帝の出身種族である神経の働きを一つ一つ更に詳しく掘り下げて参りましょう。
生体内において情報の伝達を担うものには「神経」と「内分泌」がありますが、そのうち「神経」は、電気や化学物質を使い、全身に張り巡らしたその神経経路で情報を伝えています。
神経は、解剖学的に分類するとその機能の中心となる「中枢神経」と、そこから身体各部を連絡する「末梢神経」の2つにまず分けられます。
中枢神経は頭蓋骨に収められた「脳」すなわち皇帝ブレインと背骨の中を通る「脊髄」つまり皇后スパイナルにより構成されます。
そして、それに続く末梢神経は、皇帝ブレイン(脳)と直接つながる12人の使徒「脳神経」と、皇后スパイナル(脊髄)から国土の端まで長く伸びる「脊髄神経」により構成されています。
12人の使徒は、脳の底面から左右対となって出ているとともに、各脳神経には決まった番号と名前が付けられています。
そして脊髄神経は、その部位によって「C」「T」「L」「S」という4つのグループに分かれており頚神経(C)が8人、胸神経(T)が12人、腰神経(L)が5人、仙骨神経(S)が5人というとても多くの部下を皇后スパイナルは引き連れているというわけです。
また末梢神経は、その機能や働きで分類した場合、感覚や運動を司る「体性神経系」と、内臓などを自律的に調整する「自律神経系」に大別されます。
このようにして脳は、脊髄や多くの末梢神経を従え、絶対的支配者として、独立国家『人体』の頂点に君臨し、自律神経やホルモンによりホメオスタシスの機能を維持しているのです。
脳を絶対的支配者とする神経系の情報伝達経路には、列車のように「上り」と「下り」があります。
中枢である脳を中心として考えた場合、脳に向かって情報が伝えられる上り列車にあたるものが「求心性神経」、またそれとは逆に脳から遠ざかる方向に向かって命令がなされる下り列車にあたるものが「遠心性神経」です。
求心性神経は皮膚や内臓など末梢部のセンサーがとらえた「痛い」とか「熱い」などの知覚的感覚を脳に伝え、また遠心性神経は筋肉や内臓に指示を出し運動や消化・循環などをスムーズに行えるように脳からの命令を伝えるのです。
そして、ここで是非とも皆さんに知っておいてもらわなければならないことは、私たちが自分の意志で出来ることは …
「骨格筋を動かして運動する」
ただそれだけであり、それ以外は何一つとして自分の身体に対して管理も命令も出来ないということです。
すなわち、生きるために必要な作業の99%以上は、皇帝ブレインが自律神経や内分泌器官に命令して担わせているのです。
さすがは皇帝だけあってかなり専制的というわけですね。
医学では自分の意志で管理出来るものを「随意的」、また出来ないものを「不随意的」と表現します。
起きている間は当然のことながら寝ている間においても心臓は力強く打ち続け、体温も一定範囲内に維持されており、それらは全て私たちの意志とは全く関係無く不随意的に行われているのです。
そしてその範囲は、循環・呼吸・消化・代謝・分泌・排泄・生殖・体温維持など全般におよびます。
つまり私たちは、自律神経がうまく機能してくれているから健康に生きていられるとともに、私たちが自身だと思っているその意識さえも脳の創り出した傀儡(かいらい)に過ぎず、気付かぬうちにその意識としての自分が食事をしたり、運動をしたりして皇帝のために働かされているとは本当に驚くばかりです。
私たち生命体が、自然界の中で生き、また生き残っていくためには変化し続ける周りの環境に順応するだけではなく、活動と休息を上手く使い分けなければなりません。
もし敵に出くわしたならば、戦う(闘争)か、逃げる(逃走)かを瞬時に選択し、迅速に行動しなければ殺されてしまいます。
また、闘争や逃走で傷ついた身体を修復する作業もそのあと必要となるでしょう。
そして、それら二つの「トウソウ」を同時に行うことは極めて非効率であるため、脳は生体に対し活動と休息とを分けて行わせているのです。
ふつう人は朝、目が覚めると活動を始めます。
そして日中、仕事や家事、またスポーツや勉強・趣味などに労力を費やし、その後はゆっくり休憩しリラックスするとともに、夜には睡眠をとり、疲れた身体と頭を休めます。
そのようにして私たちは日々、活動と休息を繰り返しながら、生命現象を営んでいるのです。
そしてそれには、自律神経である「交感神経」と「副交感神経」が深く関与しています。
ところで、あなたは小さいころ、仲の良い友達と公園でシーソーをして遊んだことがありますか?
二人が、それぞれ自分の体重で相手に働きかけ、上に行ったり下に行ったり、片方が高くなると、もう片方は低くなる。
お互い優位に立ったり劣勢になったりした感覚を感じながら …
きっと誰にもブランコやすべり台・ジャングルジムとともに幼い頃のとても楽しかった思い出があると思います。
でも、シーソーは一人で遊ぶことは出来ません。
必ず対になる相手が必要なのです。
自律神経もそれと同じで「交感神経」と「副交感神経」の二人が、まるでシーソーのように交代々々に優位に立ち、仲良くバランスを取り合いながら私たちの身体の状態を調整してくれているのです。
人間は主に昼の明るいときに活動し夜暗くなると休息をとります。
「交感神経」は、戦いや逃走など激しく行動する際に働く神経ですから朝の目覚めとともにその優位性が増し、それと相反するように「副交感神経」が劣勢となります。
また、夕方になり日が暮れてくると今度は「副交感神経」が優位となり、「交感神経」が劣勢に転じます。
つまり活動が激しくなる昼には「交感神経」が活躍し、また休息や睡眠をとるため夜は「副交感神経」が活躍するというわけですね。
それでは、各々の神経が主にどのような働きをしているのか、その一部を探ってみましょう。
「交感神経」は覚醒を促します。
心拍数と呼吸数を増やして血管を収縮させ血圧を上げることにより身体の隅々にまで素早く酸素と栄養素が運ばれるように働きます。
また、瞳孔を拡げ相手がよく見えるようにするとともに、鼠径部・脇・手のひら・足の裏、および全身の汗腺に働きかけて身体運動をスムーズに行わせるように働くのです。
それに対し「副交感神経」は、正反対とも言える行動をとります。
呼吸数・心拍数を減らして血流を緩やかにし、食品の消化吸収を促進するとともに、昼間の激しい戦いで傷ついた部位の修復を進めるために意識を消失させ優しく眠りへといざなってくれるのです。
このように「交感神経」と「副交感神経」の両者は、基本的に拮抗作用(きっこうさよう)と呼ばれる全く逆の働きをすることによって一つの器官に対し二重支配をしており、その環境に適した身体状態を作り出しているのです。
そして、それもまた皇帝が自身の視床下部という部分で、その自律性を調整しているというわけです。
しかし、怒りや悲しみ・ショックなどといった強いストレスが脳に加わると皇帝は調子を崩してしまい不眠や頭痛・めまい・ふらつき・食欲不振等々、不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれる様々な症状の出る状態、すなわち「自律神経失調症」が生じてしまうのです。
皇帝ブレインのもと、自律神経系とともに生体機能の状態を調節しているものに「内分泌」があります。
「内分泌」は、主に電気信号で素早く情報を伝える神経とは異なりまるで川の流れのようにそれぞれの内分泌腺より「ホルモン」という物質を血液に分泌し、血流に乗せてそのホルモンに対する受容体(レセプター)を持つ細胞(標的細胞)にゆっくりと長きにわたり作用を与え続けます。
腺とは、汗や涙など何かを分泌する組織のことであり、汗腺・涙腺・皮脂腺のように身体の外に分泌をする「外分泌腺」と情報伝達物質であるホルモンを体内に分泌する「内分泌腺」に分けられます。
そのうち、ホルモンを分泌する内分泌腺には、視床下部・下垂体・甲状腺・膵臓・卵巣・精巣などがあり、そこではそれぞれ特異的な作用を持つホルモンが作られているのです。
しかし、ホルモンはその量が多過ぎても少な過ぎても生体に障害を生じさせてしまいます。
では、ホルモンの分泌量や血中濃度はどのようにして調節されているのでしょう … 。
ホルモンには、部長・係長・平社員など、会社の役職のように段階的な階層があり、上位ホルモンから下位ホルモンへと階層的に支配がなされています。
(例…視床下部→下垂体前葉→下位の内分泌腺)
例えば、平社員があまり仕事をしない場合、その情報はたちまち上司たちに伝わり、部長は係長に、また係長は平社員に仕事をきちんとするように改めて指示をするのです。
これを「負のフィードバック」といい、上位ホルモンの分泌量、すなわち部下への指示は、下位ホルモンの濃度、つまり部下の仕事量が低くなれば増加し、高くなれば減少するといった具合に調整がなされているのです。
また他にホルモンは「サーカディアンリズム」(概日リズム)というおよそ24時間の日内リズムを持つとともに、自律神経の支配を受けているものもあります。
私たちが、この世に本当に小さな命として親から生(せい)を受け、成長していくことにもホルモンは大きく関わっています。
ここでは各々の内分泌腺がどんなホルモンを分泌し、それらがどのような働きや役割をしているのか『イアトリズム』の目線に立ってその主なものを見ていくことに致しましょう。
〈成長と発育〉
赤ちゃんとして生まれた私たちは「成長ホルモン」と言われる下垂体前葉から分泌されるホルモンにより発育期の成長が促進され、骨や筋肉が作られます。
そしてそれには甲状腺から分泌される「サイロキシン」も関与し代謝を促すとともに精神活動の調整もしています。
〈血糖値の調整〉
膵臓では、血糖値を低下させる「インシュリン」と、血糖値を上昇させる「グルカゴン」が産生され、その調節がなされています。
糖尿病は、このインシュリンの分泌異常が生じることにより起こる病気で悪化すると失明や末梢神経障害による組織の壊死などを引き起こしてしまいます。
〈サーカディアンリズム〉
日常の生活においては松果体から分泌される「メラトニン」が概日リズムを形成し私たちの暮らしを見守ってくれています。
〈血圧とステロイド〉
腎臓から分泌される「エリスロポエチン」は、赤血球の新生を促進させ、同じく「レニン」は、血圧の調節に関与します。
また腎臓の上に位置する副腎から分泌される「アドレナリン」は、心臓や肝臓に作用し、心拍やグリコーゲンの分解に関与、「ステロイド」は、炎症やアレルギーの抑制に貢献します。
〈男らしく、女らしく〉
私たちは心身の成長に伴い生殖の能力を身につけていきますが男子においては精巣より分泌される「テストステロン」という男性ホルモンが声変わりや体毛の成長を促し、筋肉質な肉体を形成するとともに男性内生殖器を発育させ、精子を産生します。
また女子においては、卵巣より分泌される卵胞ホルモンである「エストロジェン」と、黄体ホルモンの「プロゲステロン」という二つの女性ホルモンが乳腺や乳房を発達させ、皮下脂肪のついた女性的な肉体を形成するとともに、排卵や妊娠の維持をおこないます。
そしてこのように成熟した個体へと成長した私たちは、互いに愛する相手を見つけ子孫を作り、はるかなる未来へとその生命を連綿と引き継いでいくのです。
さて、ここからは独立国家『人体』の国土を形成している3つの省「骨格系」「筋肉系」「外皮系」とそれぞれに所属する各部署の働きを詳しく見てまいりましょう。
まずは、その一番基礎となる骨に注目です。
骨格系は、その名の通り骨組みとして身体を支えるとともに頭部においては硬い「頭蓋骨」が皇帝を衝撃から守る役目もしています。
主な骨を部位別に挙げると、
腕には「上腕骨」「橈骨」「尺骨」があり、
足には「大腿骨」「脛骨」「腓骨」があります。
また体幹には「背骨」「肩甲骨」「鎖骨」「肋骨」「骨盤」などがあり、胸や腹の内臓を保護しているのです。
人体は約206個の骨で構成されていますが、人によって「尾骨」の数が微妙に違います。
3~5個くらいの幅ですが、進化の程度に個人差があるのかもしれませんね(笑)。
そして、人体の中で最も小さい骨は耳の中にある「耳小骨」で米粒ほどの大きさの骨が3つ繋がり鼓膜の振動を内耳に伝えています。
また骨は身体の重みを支えるだけではなく、カルシウムの貯蔵庫であるとともに中には髄を持つものもあり赤血球や白血球の産生もしています。
血液は骨で造られているって皆さん知ってましたか?
そして高齢者に多いのが骨密度の低下する骨粗鬆症ですが、それは骨が毎日生まれ変わっていることに起因しています。
骨は「骨芽細胞」によって毎日造られ、「破骨細胞」によってどんどん壊されます。
でも若く健康な人は、そのバランスが安定しているために骨は硬く丈夫ですが、特に閉経後の女性などは骨芽細胞の活動を高める性ホルモン「エストロジェン」が急激に減少するため骨がスカスカになってしまうのです。
骨を造るにはとにかくカルシウムの摂取と運動が大切です。
そして、太陽の光を毎日浴びること。
太陽の光はカルシウムを骨に沈着させる働きをするビタミンDを増加させるのです。
人体の根幹を成す大切な骨。
いつまでも強くありたいものですね。
骨格系と協力して身体各部の運動を司り、国土の大きな部分を占める省が「筋肉系」です。
筋肉は主に骨を動かして身体を運動させるため、その末端は骨に付着しています。
そしてその付着部が「腱」であり、とても硬い組織で出来ています。
鶏肉を食べた時にあるあの白く硬いスジが腱なのです。
ギリシャ神話の英雄アキレウスに由来する有名な足首の後ろにあるアキレス腱は、ふくらはぎの筋肉である「腓腹筋」「ヒラメ筋」が踵の骨に付く部分です。
また腱は、刀のように鞘(さや)に収められており、手首などが痛くなる腱鞘炎は、筋肉の疲労などにより、その筋肉の腱の鞘の部分が炎症を起こしたものなのです。
では、人体の代表的な筋肉を見ていきましょう。
肩や腕には「三角筋」や力こぶを作る「上腕二頭筋」があり、肩凝りは首から背中に拡がる「僧帽筋」が固くなるのが主な原因です。
胸や腹の「大胸筋」や「腹直筋」は、たくましい男性的な肉体を形作り、お尻にある「大殿筋」は、ふくよかで女性的な肉体を演出してくれます。
また、足の太ももには「大腿四頭筋」「大腿二頭筋」という大きな筋肉があり、「前脛骨筋」とともに身体の重みを支えています。
スポーツにはマラソンやウォーキングなど長い時間継続する運動と砲丸投げや重量挙げなどのようにとても短い時間に大きな力を出す運動があります。
そして筋肉には各々の運動に適した種類があり、それぞれ「赤筋」「白筋」と呼ばれています。
一生休みなく泳ぎ続ける回遊魚のマグロなどは持久力があり赤い身をしていますが瞬発力はありません。
しかし、磯の岩場などでじっとしている鯛などは白い身で持久力はありませんがいざとなると凄い瞬発力で大きな力を出すことが出来るのです。
私たち人間にも生まれつき「赤筋」と「白筋」の別があり、普通の人はその比率があまり偏っていませんが、オリンピックや世界選手権等に出場する選手などになるとマラソンなら「赤筋」のかなり多いマグロタイプの筋肉を持った人が走っているはずですし、重量挙げは「白筋」に偏った筋肉を持つ磯魚タイプの人でないとまず出場は不可能だと思います。
よく「99%の努力と1%の才能」とは言うものの、残念ながら各種目に出場する選手たちの身体的特徴が、種目によってガッチリ型や痩せ型など、ほぼ共通していることを見ても分かるように、やはり人には向き不向きってあるんですね。
『人体』という国の国土を外界から区別・分離する境界を管理する省、それが「外皮系」です。
外皮系を構成するものは「皮膚」とその派生物である指の末節を保護する「爪」、および身体各所のいろんな種類の「毛」などです。
そしてそれらは、暑さ寒さや衝撃、また細菌・ウイルスなどの攻撃も含めた外部環境から国を守る働きをしている『人体』の城壁なのです。
ここではまず全身を覆う「皮膚」に着目し、詳しくその役割と特性を見てまいりましょう。
皮膚は外から表皮・真皮・皮下組織の3層で構成されており、表皮の最下部である基底層では常に新しい皮膚が作られ古くなったものは、約4週間で表面から垢として捨てられていきます。
皮膚には毛穴があり、脂腺や汗腺がその途中に開口し皮膚の乾燥を防いだり、体温調節を担ったりするとともに、そこから生えた毛が皮膚を衝撃や寒さから防御しています。
寒くなると鳥肌が立ちますが、これは真皮にある立毛筋が体温を逃さないために収縮し、毛穴や汗腺をふさぐことによって起こるものです。
また皮膚は国境線を形成する場所でもあるため、局所における外部の情報をキャッチする感覚器官のような働きもしています。
そしてそれには「触覚」「圧覚」「温覚」「冷覚」「痛覚」の5つの感覚があり、それらを感知するマイスネル小体・パチニ小体・ルフィニ小体・クラウゼ小体・自由神経終末などのセンサーが全身に点在しているとともに、それらの情報は皇后スパイナルに伝えられ、皇帝へと伝達されるのです。
しかし、熱せられたフライパンに誤って手を触れてしまったなど、センサーからの情報があまりにも強く、緊急対応が必要な時は皇后スパイナルが自己判断で腕の筋肉に瞬時に命令を下し、手を引かせた後に皇帝に知らせるという行動を取るのです。
これが脳を介さない反射「脊髄反射」であり、皇帝ブレインの妻である脊髄も中枢神経である由縁なのです。
国内の状態を安寧に保つためには外部の情報が欠かせません。
そしてそれは、国の存亡に関わりかねない事態にも発展することがあるため、その重責は皇帝ブレインの側近である12人の使徒「脳神経」がその省の仕事を担っています。
ある特定の刺激に対して反応する受容器を「感覚器」と呼びますがそれには、視覚・味覚・嗅覚・聴覚があり、人体においては、目・舌・鼻・耳がそれらを担当し、それぞれ特徴のあるシステムで外界からの情報を感受しています。
また感覚器系は、皇后スパイナルの管轄する外皮系に属する皮膚感覚も入れて「五感」と表現されることもあります。
〈視覚を司る眼〉
眼は入ってきた可視光の情報を網膜で受け止め「視神経」を経由して皇帝に伝達しています。
人の眼はよくカメラに例えられますがまさにそのものでフィルムが「網膜」、レンズにあたるものが「水晶体」、入ってくる光の量を調節する絞りに相当するものが「虹彩」、ピントの調節を担っているのは水晶体の厚みを自在に変える「毛様体」、さしずめ「まぶた」は、レンズキャップといったところでしょうか。
そして白内障は、水晶体が年齢により劣化して白濁するもので、緑内障は、眼圧の上昇などにより視神経が侵されるものです。
〈味覚を司る舌〉
味覚は、舌の表面に約1万個もある味蕾(みらい)の中の味細胞により感知され「甘い」「酸っぱい」「苦い」「塩からい」というたった4つの基本感覚が組み合わされることにより、多種多様な味が構成されています。
そしてその情報は、脳神経Ⅶ「顔面神経」脳神経IX「舌咽神経」により皇帝に伝えられますが、舌の前側2/3は顔面神経、後ろ1/3は舌咽神経が支配しています。
味覚の障害は、これらの神経の麻痺および亜鉛やビタミンの欠乏によって引き起こされます。
〈嗅覚を司る鼻〉
嗅覚は、鼻腔の天井に存在する嗅細胞により感受され、脳神経Ⅰ「嗅神経」を経由して皇帝にその情報が伝えられます。
しかし、人の嗅覚は非常に順応性が高くすぐに慣れてその匂いを感じなくなってしまいますが、別の匂いは感じます。
また2種以上の匂いを混ぜると第3の匂いを感じるため、これを利用して悪臭を減弱させることが出来るのです。
そして味に4つの基本の味があるように匂いにも基本となる原臭があり
①ショウノウ ②ジャコウ ③芳香(花香)
④ハッカ ⑤エーテル ⑥刺激臭 ⑦腐敗臭
の7つがそれなのです。
〈聴覚・平衡感覚を司る耳〉
聴覚に関して人は自然界で発生するあらゆる周波数の音に対し、約20~20,000Hzの範囲で音をとらえることが可能です。
空気を伝わった音の振動は、耳の中の鼓膜で受け止められ3つの「ツチ骨」「キヌタ骨」「アブミ骨」という耳小骨を介し、内耳の蝸牛そして脳神経Ⅷ「聴神経」の枝である蝸牛神経を経由して皇帝へと伝えられます。
また耳は聴覚以外に身体のバランスをとる平衡感覚も司っており「卵形嚢」「球形嚢」「三半規管」より構成される前庭でそれを感受し、もう一つの聴神経の枝である前庭神経を経由して皇帝へとその情報を伝えています。
そして、卵形嚢と球形嚢の内部には「耳石」と呼ばれる平衡砂が入っており、三半規管の中のリンパとともに、姿勢の変化を敏感に感受しているのです。
一人一人の国民に当たる「細胞」のための栄養を食品から取り出し国内機能の維持に努める省が消化器系です。
そしてそれは、口から肛門まで続く長いトンネルおよびそれに付随する器官により構成されていますが、ここで大切なことは、その通路である消化管の中は全て[外]すなわち、体外であると認識することなのです。
食道・胃・小腸・大腸と続く消化管の中は、一見すると体内に思えますが…
皆さん、ちょっと食べる竹輪を想像してみてください。
竹輪はトンネルのように穴が開いていますよね。
そしてその穴の入口と出口が、口と肛門だと思って欲しいのです。
つまりそれは唾液や胃液など消化管の中に分泌される消化液は、汗や涙と同じ外分泌に分類されるということを意味しているのです。
では、体内とはいったいどの部分をいうのでしょう?
焦げ目の付いた表面は外皮、穴は消化管の中、…となれば、厚みのある竹輪そのものが体内ということになりますよね。
つまり消化とは、体外である竹輪の穴の中で食品を細かく吸収できるような状態に分解して必要なもの(栄養素)と不必要なもの(便)に分ける作業であると言えるのです。
そしてそれには、消化管の運動による「機械的消化作用」と消化液分泌による「化学的消化作用」の両方が施されます。
では、その作業の様子を口から順に食品の流れとともに見てまいりましょう。
〈口腔内〉では、まず歯によって食品は細かく砕かれ唾液と混ぜ合わされてやわらかい食塊となります。
そして唾液に含まれる酵素が消化を始めるとともに嚥下運動により順次、食道へと送られます。
〈食道〉の役割は、食塊を胃に移送することだけで消化液は分泌していません。
でも、逆立ちしてもジュースが飲めるのは食道の蠕動運動により食品が体位に関係なく胃へと運ばれるからなのです。
また食道と胃の境目は「噴門」と呼ばれています。
〈胃〉の内壁からは胃液が分泌されますが、その主な成分は塩酸とペプシンで、強い酸性(pH1~2)を示し、食塊を殺菌するとともにタンパク質を分解していきます。
でも皆さん、ちょっと不思議に思いませんか?
どうして同じタンパク質で出来ている胃自身が、その酸で溶かされてしまわないのでしょうか?
それは胃液に含まれるムチンという粘液が胃の壁を守ってくれているからなのです。
そして胃液の分泌にも自律神経とホルモンが大きく関わりバランスよくその調節を行ってくれています。
しかし、人は強いストレスがかかるとそれらが失調し胃の壁は塩酸に溶かされ始めます。
それが「神経性胃炎」で、ひどくなると「胃潰瘍」を引き起こしてしまいます。
心身ともに恒常性を維持しないと健康を害なうということですね。
胃によって粥状にされた食品は次に胃の出口である「幽門」を通って小腸へと送られます。
〈小腸〉は、「十二指腸」「空腸」「回腸」から構成されますが、十二指腸には膵臓と胆嚢からの管が開口していて、そこから膵液と胆汁が流入してきます。
さらに小腸からは腸液が大量に分泌され、それに含まれる幾種類もの消化液により最終的な消化がおこなわれます。
そして、アミノ酸や糖、脂肪酸などの最終分解産物となった食品は小腸の粘膜から水分とともに吸収され身体を作る材料として使われたり、活動するためのエネルギーへと変換されていくのです。
ちなみに「十二指腸」という名前は、手の指を横に12本並べた長さ(約25㎝)くらいあることに由来します。
〈大腸〉は、「盲腸」「結腸」「直腸」により構成され、結腸は更に「上行結腸」「横行結腸」「下行結腸」「S状結腸」に分けられます。
そして大腸の働きは、小腸で吸収しきれなかった水分の残りを吸収するとともに、大腸菌をはじめとする腸内常在菌が便を形成し、不要物を肛門より排泄する作業をしているのです。
また、盲腸の部分には「虫垂」と呼ばれる小さな突起が垂れ下がっており、何らかの原因でそれが炎症を起こす場合があるのです。
そう、皆さんもご存知の通り俗に「盲腸」と呼ばれる腹痛を起こす疾患「虫垂炎」がそれなのです。
国内交通の維持・管理を任されている省が循環器系です。
そしてその役目は、血球・酸素・栄養・ホルモンなど様々な物質の運搬で、全身の細部にまで張り巡らせた「血管系」と「リンパ系」という2つの交通網でそれを担っているのです。
「血管系」は心臓・動脈・静脈からなり、「リンパ系」はリンパ節とリンパ管から構成されています。
ではまず主たる交通路である血管系から見ていくと致しましょう。
「血管系」は、心臓をポンプとして血液を動脈に送り出します。
そして、何らかの組織を介して静脈に入り再び心臓へと帰ってくる環状線のような閉鎖的な通路であり、それには肺に行ってすぐに帰ってくる短い経路の小循環(肺循環)と全身のあちこちを周り、ようやく心臓へと帰ってくる大循環(体循環)という2つのループがあるのです。
心臓から出て肺に行った血液は、老廃物である二酸化炭素を捨てる代わりに肺から新鮮な酸素を受け取り、浄化されて心臓へと帰って行きます。
そして心臓は、その酸素の豊富な血液を動脈に乗せ全身の組織へと送り出し、一つ一つの細胞がうまく活動できるように呼吸をさせるとともに、そこで生じた二酸化炭素を静脈を使って再び自分のところへと戻してくるのです。
しかし、それには心臓自身も栄養されなければポンプの役目を果たすことは出来ません。
そこで心臓は、体循環として送り出すための大動脈からまず自分のためにその枝を分岐させ、まるで冠のように自分にまとわせるのです。
そしてそれは「冠状動脈」と呼ばれ、強い力を生み出す心筋のすみずみにまで枝分かれしていきます。
この冠状動脈の流れが少し悪くなり、運動時などに胸が痛むものが「狭心症」です。
また、その狭くなった血管に血の塊(血栓)などが詰まり、そこから先の組織が壊死を起こすものが「心筋梗塞」で、激しい胸の痛みに襲われ死に至る場合も多くあります。
「リンパ系」は、身体各所において毛細血管から漏れ出た組織液をリンパ管に集めて静脈に返すのがその働きです。
そしてその経路の途中にはリンパ節という関所があり、体内に入り込んだ細菌や癌細胞などを見つけ殺してしまうまるでフィルターのような役目をしています。
そうすることにより、それらの異物は血管内に混入すること無く、全身感染や転移を未然に防ぐことが可能となっているのです。
炎症を起こした際、鼠径部や脇の下また首などが腫れるのは、そこにあるリンパ節が悪い雑菌や腫瘍細胞などと戦ってくれているからなのです。
さて、次にお話しする2つの省は、国内の環境維持を担う働きをするものです。
大気汚染を防ぐことを仕事とする「呼吸器系」。
そして国民の生活により生じるゴミを排泄する「泌尿器系」。
それでは、まずは呼吸のシステムに焦点を当ててみましょう。
【呼吸器系】
鼻からノド(咽頭)を通り、声帯のある喉頭より気管・気管支、さらには肺へと続く道を「気道」といい、それを構成する各部を総称して「呼吸器系」と呼びます。
その中でも特に鼻腔は、重要な役割を果たしています。
では空気の通る順にそれぞれの器官の働きを見てまいりましょう。
鼻から入った空気は、そこに林立するたくさんの鼻毛でまず大きなゴミが取り除かれます。
そして細かいホコリや花粉・ウイルスなどは、常に流れ続けている鼻汁で洗い流され、またその量が多い場合には、クシャミで外に排出されます。
寒い冬においては、冷たく乾燥した空気を直接そのまま肺に送ってしまうと炎症を起こしてしまいます。
ですから、それを防ぐために鼻はまるでエアコンのように外から入ってきた空気に鼻汁で適度な湿度を与えるとともに、そこで待ち構える「キーゼルバッハ部位」と呼ばれる毛細血管の集まったトンネルで空気の温度を体温と同じくらいにまで上昇させ咽頭へと送るのです。
そして無菌となった空気は、喉頭・気管を経て、気管支の細い管を通り抜け、肺の中の肺胞に達し、そこで酸素と二酸化炭素のガス交換が行なわれます。
この一連の作業は「外呼吸」と呼ばれ、肋骨と肋骨の間にある筋肉(内肋間筋・外肋間筋)と横隔膜の運動がそれを担っています。
一般的に呼吸と言えばこの外呼吸のことであり、また外呼吸に対し細胞内で酸素を使ってエネルギーを生み出すための作業による呼吸は「内呼吸」と呼ばれ、その時に二酸化炭素が生じるのです。
しかし現代社会における車の排気ガスや工場排煙などは肺にとってまさにスモッグといったところでしょう。
我々は、発展というものと引き換えに大切な自然を、そして自らの健康をも喪失しつつあるのかも知れません。
蒼穹の下、できれば少しでも綺麗な空気を吸いたいものですね。
ちなみに横隔膜は、胸腔と腹腔の間にある筋板で腹式呼吸を担っています。
そして、時々起こる厄介な「しゃっくり」は、この横隔膜の痙攣によるものであり、また余談ですが、焼肉店で食べる「ハラミ」は、肉のように思いますが、実は牛の横隔膜の部分なのです。
骨格筋ではなく、内臓の一つに分類される筋組織で出来た横隔膜。
常に動き続けているからこそ、あんなに美味しいのですね。
【泌尿器系】
独立国家『人体』において呼吸器系とともに国内の環境を守るのはオシッコを造る「泌尿器系」です。
そして、肛門から排泄される大便も一見すると体内で生じたゴミのように思いますが、既に消化器系で学んでいただいた通り、腸内は体外であるため、大便は『人体』という国の国民(細胞)が出した老廃物(ゴミ)ではありません。
少しややこしいですが、しっかり区別して覚えてくださいね。
では、『人体』の環境省とも言える廃棄物処理の現場に目を向けてみましょう。
そしてまたそれは、素晴らしいリサイクル能力を持っているすごい器官でもあるのです。
生命活動により生じた体内の老廃物は、尿として体外に排泄されます。
尿を作るのは、腰の左右にある空豆の形をした2個の「腎臓」。
腎臓で作られた尿は「尿管」という管を通って「膀胱」に蓄められいっぱいになると「尿道」から体外へと棄てられます。
これが泌尿器系の働きですが、腎不全を起こし腎臓の機能が著しく低下すると一生、人工透析をして体内を浄化し続けなければ尿毒症を起こして死んでしまいます。
では、そんな大切なオシッコ作りを腎臓がどのようにして行なっているのかを見てまいりましょう。
一言で言えば腎臓は、血液の濾過装置です。
体内の細胞や組織で生じた老廃物は全て血液で運ばれ、腎臓の中にある「ネフロン」というフィルターで浄化されます。
このネフロン、なんと片方の腎臓に 約100万個もあって、驚くことに1日に 約150リットルもの原尿を作っているのです。
しかし、尿として実際に棄てられるのは尿素や尿酸、薬物などを含んだ一部だけで、その99%は有効なグルコースやアミノ酸などとともに再吸収され血管の中に戻されます。
また腎臓は、尿の生成以外にも「レニン」や「エリスロポエチン」というホルモンを分泌して血圧にも関与し、体液のpH調節を行うとともに、骨髄に作用して赤血球の新生を促進する働きもしています。
女性に多い膀胱炎は、尿道から入ったバイ菌が膀胱で炎症を引き起こすものですが、放っておくとバイ菌が尿管を登り、腎臓の入り口で腎盂炎となったり、また更に進んで腎炎になったりすることもありますので、常に清潔を保つとともに冷えや疲れを避けるようにしなければなりません。
女性に比べ、男性はどちらかと言えば尿道が長いため、膀胱炎より尿道炎になりやすい傾向があります。
普段から水分をたくさん摂ってオシッコをいっぱい出しましょう。
さて、いよいよここからは国の存亡を一手に担う国防の要、独立国家『人体』の防衛省に当たる「免疫系」を他の省の防衛システムとともに詳しくご紹介いたします。
免疫系とは「疫病」すなわち伝染病などから「免れる」ための生体システムのことであり、それには様々な器官や機構が複雑に関わっています。
そしてそれは、生まれつき持っている「先天性免疫」と生活の中で獲得する「後天性免疫」の2種類に分かれます。
ただ、ここで皆さんには免疫について一番大切なことを初めに覚えておいて欲しいのです。
それは…
免疫とは「自分とそれ以外のもの、すなわち『自己』と『非自己』を識別し、それを殺してしまう機能」であるということです。
そしてその中には、私たちがこの世に生まれ来るための巧妙な手法とアイディアも含まれているのです。
少し長くなりますが、細胞たちの繰り広げる生き残りをかけた侵略者との壮絶な戦いと皆を思う気持ち、そして自己を欺いてでも守ろうとする生命誕生の不思議に触れてくださいね。
そう、免疫のシステムは戦地における愛と感動の物語なのです。
では、私たちの身体を外敵から防御する鉄壁の守りを詳しく見ていくと致しましょう。
「先天性免疫」は非特異的、すなわち相手を選ばず攻撃する性質を持っており、外敵に対し素早く対応します。
まず最初の壁は、皮膚や粘膜が生体表面のバリアとして病原体に立ちふさがります。
皮膚から分泌される汗や皮脂には多くの微生物に対して毒性を持つ「脂肪酸」が含まれており、また涙や鼻水に含まれる「ラクトフェリン」や「リゾチーム」は細菌やウイルスを撃退します。
気道においては咳やクシャミが異物を喀出し、消化管では唾液や強い胃酸などが外来菌を殺菌し、大腸に住む腸内常在菌たちはよそ者に栄養を渡さず病原菌を飢えさせその繁殖を抑制します。
しかし、それでも繁殖した場合には、わざと下痢を引き起こし常在菌ごと敵を体外に排出してしまうのです。
また尿路においてはオシッコの流れによって、膣内においては酸性に保たれたその環境が外敵の体内への侵入を阻止しています。
でも時にはその障壁を越え、体内に侵攻してくる強者もいますのでそのような場合に備え生体は「白血球」という外敵に対する軍隊を常時待機させているのです。
そして各組織には白血球の一種である「単球」が血管から組織に出て姿を変えた「マクロファージ」という名の大食細胞が待ち構えていて自分以外の細胞は何でも選ばずどんどん食べてしまうのです。
でも、どのようにして白血球たちは、自己とそれらを見分けているのでしょう?
それは、自己の各細胞に付けられた自分を証明するための名札によってなされています。
その名札は「クラスⅠ-MHC分子」と呼ばれ、自己の細胞であれば形や性質がいかに違っていても全く同じ名札が付けられているのです。
しかし、自己の細胞はウイルスなどにひとたび取りつかれると自らウイルスの断片を名札にくっ付けて名札の形を変えてしまいます。
こうなってしまっては、もう自己を証明することが出来ません。
ウイルスなどに感染した細胞はこうして…
「もう僕は、君たちの仲間ではないんだよ …」
と、皆に知らせ自分が犠牲となり自分ごとウイルスを殺してもらうことで他の仲間に感染がおよぶことを食い止めようとするのです。
悲しいドラマですが、自身という社会を成り立たせ、仲間を助けるためには、自ら犠牲になることも時には必要なのですね。
私たち人間社会も自己中にならず、他者を思いやれるよう「人体」という国の国民を見習いたいものです。
「後天性免疫」は、同じく白血球の一種であるリンパ球たちが担っており、それは獲得免疫とも呼ばれ「特異的」すなわち、特定の相手に対してのみ攻撃を加える専属部隊として待機しています。
しかし、外からやって来る敵は何万種にもおよびます。
では、どのようにしてリンパ球たちはその膨大な敵を見分け、また各々に対する専属部隊を作りあげられるのか、その仕組みを探ってまいりましょう。
リンパ球には、司令官である「ヘルパーT細胞」を筆頭に、殺し屋「キラーT細胞」、専用の武器を作る「B細胞」など、何でも食べるマクロファージとともにそれぞれ違う役割を 担っています。
マクロファージは組織内に入ってきた敵(抗原)を食べたあと、その断片の一部を、血液中を流れながら常に全身をパトロールしているヘルパーT細胞に手渡します。
またB細胞もマクロファージと同じように抗原の断片をヘルパーT細胞に手渡します。
そして、抗原の断片を受け取ったヘルパーT細胞は、それを分析し非自己だと認識すると「サイトカイン」という物質を出してマクロファージやキラーT細胞・B細胞を活性化させ、抗原の集団に総攻撃をするよう命令します。
その時、B細胞はそれぞれの抗原に対し専用の武器となる「抗体」という物質を作って抗原に攻撃を行います。
敵を捕まえてその弱点を研究し最も効果的な武器を作るというわけですね。
つまりこれが人体の最強部隊が持つ戦闘システムなのです。
しかし…
ここで重大な問題が一つ生まれます。
それは何を隠そう、私たち人間がその命を未来へとつなげるために絶対に必要な「妊娠」という現象なのです。
妊娠は父親の精子と母親の卵子が受精して始まります。
でも、それこそが大問題なのです。
つまり、母親の卵子は「自己」の細胞であるものの、父親の精子は「非自己」であり、受精卵はまるでウイルスに感染した自己の細胞と同じ状態だと判断されてしまうのです。
これでは母親のキラーT細胞にすぐにやられてしまいます。
では、胎児は如何にして母親の免疫機構から自分の身をを守っているのでしょう?
それは名札をまるまる隠してしまい「自国民」か「外国人」かをわからなくさせその攻撃から免れているのです。
しかしここで安心してはいけません。
キラーT細胞以外にも「ナチュラルキラー細胞」という名札を付けていない細胞を狙う殺し屋がいるのです。
そこで胎児は隠している「クラスⅠ-MHC分子」の名札の代わりに「HLA-G」という人類共通の名札を出してナチュラルキラー細胞からの攻撃をかわそうとします。
またそれと同時に胎児の細胞からは、母親の免疫機構を邪魔する物質も放出されるのです。
妊娠という現象は、このように二重三重の作戦によって継続され、この困難を乗り越えた者だけが奇跡に近い確率でこの世に生まれ来ることが出来るのです。
そして勿論、あなたもその選ばれし者の一人です。
自分だけのものではない大切なその『生命』…
私たちは最期まで責任を持ってその命に真摯に対峙していかなければならないのです。
『人体』という私たちの国家は、完全に鎖国しているわけではありません。
時には、他の国と友好関係を深く結び、同盟国として新しい国作りをすることもあるのです。
そして、それを担うのが外務省にあたる「生殖器系」という器官たちなのです。
生殖器系は「男性」と「女性」で大きな違いが見られます。
しかしそれらは片方だけで機能するものではありません。
種の保存のため新しい生命を作るべく、男女が和合して初めてその役割を果たすことが出来るものなのです。
《男性の生殖器》
男性において陰茎は、泌尿器としての働きもありますが、ここでは生殖器としての機能にのみ着目したいと思います。
また生殖器は男女とも「内生殖器」と「外生殖器」に分かれます。
男性の生殖器は「精巣」「精管」「精嚢」「前立腺」などの内生殖器と「陰茎」「陰嚢」などの外生殖器から構成されています。
精巣では精子が作られ、精管によって運ばれたのち、精嚢や前立腺からの分泌液と混ぜられ精液となります。
陰茎の中には海綿体と呼ばれる組織があり性的に興奮するとここに血液が流れ込み勃起現象が起こります。
また射精は、脊髄反射により行われています。
《女性の生殖器》
女性の生殖器は「卵巣」「卵管」「子宮」「膣」などの内生殖器と「陰唇」「陰核」などの外生殖器から構成されています。
そして男性生殖器と最も違う点は、約28日ごとの周期的変化がみられることです。
思春期になると月経が始まり、生殖が可能となり、閉経期に至るまでの間に 約400個の卵細胞が卵巣から排出されます。
月経周期は子宮内膜の脱落により膣から出血する「月経期」、月経開始第5~6日より排卵までの間に子宮内膜が増殖する「増殖期」そして、排卵後にホルモン分泌が活発になり受精卵が着床しやすい状態となる「分泌期」に分かれますが、受精・着床が起こらないと再び「月経期」に移行します。
排卵後の卵子は約1日、また女性生殖器内に入った精子は約2日の寿命を持っており受精すると子宮内膜に着床し妊娠が始まります。
受精は通常、卵管で行われ子宮腔内に移動し着床したのち、胎児と母体を連結する「胎盤」が形成され胎児はそこを通じて酸素や栄養素を取り込み、二酸化炭素や老廃物を放出します。
そして胎児は子宮内で約40週間発育を続け、また次の新しい生命、新しい世代を担う者としてこの世に生まれ来るのです。
まさに人知を越えた『神秘』そのものですね。
さて皆さん、専制国家『人体』の統治システムは如何でしたか。
それぞれの省がかなり専門的な仕事をしていることにきっと驚かれたのではないかと思います。
しかし国の機関はこれだけではありません。
今まで登場していない機関が他にもあるのです。
次に紹介するのは意外と知られていないマルチ機関「脾臓」です。
脾臓は、胃の後ろ左側にある長径10㎝くらいの卵形をした臓器で、主にリンパ球とともに免疫を担っているため一応免疫系に属しますが、それ以外にもリサイクル工場として古くなった赤血球を破壊しヘモグロビンに含まれる鉄を回収する仕事や、血液の貯留施設として全身に流れる血液量を調節したりしています。
また血液は、普段骨髄で造られていますが、何らかの理由でそれが出来なくなった時、脾臓は驚くことにピンチヒッターとして血液を造り始めます。
すなわち予備の増血器の働きを持っているというわけですね。
さて、いよいよ最後に登場するのは、我が国最大の臓器であるとともに、最もマルチなスーパー機関、それは…
そう、『Mr.レバー』こと、「肝臓」です。
肝臓は一応、消化器系に属しますが国内最大の化学工場として様々な役割を担っています。
そして、その数はあまりにも多く数百にもおよびます。
ですからここでは、その働きの代表的なものを幾つかピックアップすると致しましょう。
肝臓と聞いて皆さんがまず、思い浮かべられるのは、アルコールの代謝ではないでしょうか?
アルコールはその分解過程で人体に有害な「アセトアルデヒド」という物質に変化します。
つまりそれが悪酔いの原因物質なのです。
肝臓は、それを無害な酢酸へと変化させるとともに、一部の食品に含まれる自然毒や薬物など、身体に害を及ぼす毒素を解毒する働きをしています。
またエネルギーとなるブドウ糖をグリコーゲンに変えて貯蔵したり身体の構成材料であるタンパク質を食品より分解したアミノ酸から合成するほか、胆汁を生成し、自身のすぐそばに位置する胆嚢へと注ぎ、脂肪の代謝にも関与します。
そして肝臓は、自身の中に多くの血液を貯め込み全身を流れる循環血液量を調整し、その大工場からでる熱により体温の維持・調節、および血液凝固に関連する物質の生成も行っているのです。
本当に挙げたらキリがありません。
このように肝臓は、生命維持に欠かせないたくさんの仕事を日々、こなし続けているのです。
また肝臓は、脾臓と同様に危機の際には増血器としての機能も担い始めます。
そして何よりも肝臓について一番驚くことは、まるで切れたトカゲのしっぽのように驚異的な再生能力を持っているということです。
肝ガンの切除手術などにより多くの部分を無くしたとしても肝臓はわずか数週間で元通りに修復再生されるという極めて特殊な機能を備えているのです。
さすがは、『人体』NO.1のスーパーマルチ機関、国家機関を維持するため、地震やテロなど国家機能を揺るがすような大災害に対しても強く作られているというわけですね。