イアトリズムの持つ意味やその歴史・目的などを、その実質的内容とともにわかりやすく紹介しています。
皆さん、おはようございます。
わたくしは、この講義を担当させていただく『イアトリズム学院』学長の「イアト」です。
どうぞ、よろしくお願い致します。
さて、本講義は《イアトリズムの概説》と銘打ちまして…
「いったい、イアトリズムとは何ぞや?!」
…という訳で、イアトリズムの持つ意味や目的、また実質的なその内容を詳しく解説させていただく授業となっております。
きっと皆さんは、初めて聞く言葉かもしれません。
でも心配は一切ご無用!
わたくしが、わかりやすくお話しさせていただきます。
それでは、ご一緒に『イアトリズム』の世界に旅立ちましょう!
古代ギリシャにおいて医術の神、アスクレピオスの父としても知られるアポロンの神殿に刻まれた「汝自身を知れ!」という言葉。
紀元前5世紀、あの大哲人ソクラテスは、その『無知の知』という概念のもと、問答法という手法を用いて自身の無知さを自覚することの重要性を人々に説いてまわったのです。
そして彼の死後、その遺志は弟子のプラトンたちに引き継がれアテナイ(現アテネ、ギリシャの首都)の町では現在の大学や学術団体を意味するアカデミーの語源となったアカデメイアという講義が市民たちに開かれ、医学・天文・幾何学など様々な学問が教授されていたのです。
そこで語られたソクラテスのものとされる偉大な言葉、
それは…
「大切なのは、ただ生きるのではなく、よく生きる」
…というものでした。
すなわち「よく生きる」とは、自身と皆に思いを向け、しっかりと自分のフィロソフィア(哲学)を持って生き抜くこと。
哲学は「愛と叡智」を意味するものであり、もしかするとそれは、今を生きる私たちに欠けている最も必要な言葉なのかもしれません。
どんな人間であるかに関わらず、私たちは皆、何も知らない純真で無垢な赤ん坊としてこの世に生まれてきます。
そして知識の蓄積とともに成長・発育し、やがて大人となり、いつの間にか積極的に学ぶことを忘れ、自分がいろんなことを知っているつもりになってしまいます。
そして、自身の無知を知らぬがゆえに体調を崩したり、病を自ら引き寄せたりしていることも多いはずなのです。
『イアトリズム』は、ギリシャ語で医学を意味する「IATRO」という言葉と主義・行動・学説などの意味を持たせる「 -ISM」が合わさって出来た合成語です。
すなわち『イアトリズム』(IATRISM)とは、ある特定の療法や施術法をさす言葉ではなく、医学的な知識を豊かにすることにより、日常の食事や運動・睡眠などを適切な状態でおこないまた体調の不具合や病気の予兆などを早い段階で見定め、まだ病気にならないうちに対処することを可能にする知的健康法の概念そのものをさす言葉なのです。
自分の健康を維持するためには、まず自身をよく知らなければなりません。
そしてその上で自分に最も合う納得のいく健康法を見つけることが大切なのです。
誰一人として同じではない世界に一つだけの花。
色や形、香りなどが一輪一輪異なるように、人それぞれの体質も一人として同じものはありません。
また同じ人であっても環境や年齢によって体調は日々大きく変化していきます。
つまり『イアトリズム』は、心身の健康を医学的知見によって可能な限り自然に維持・継続するための思想的観念を表す言葉なのです。
まぁ簡単に言えば…
「要するに医学を主体とする健康にまつわる知識を豊かにして健やかな日常を送りましょう」
って事ですな!
それでは、ここからは『イアトリズム』の持っている考えや目的、その歴史などを更に詳しく一緒に学んでまいりましょう。
この地球という小さな星に住む世界の人々に目を向けたとき…
人種・国籍また年齢や性別に関わらず、日々の健康な生活は全ての人たちの欲するところではないでしょうか。
しかし、様々な国や地域において悲惨な戦争は繰り返され、貧困による飢餓に苦しむ人々がたくさんいる一方、それとは完全に対極にある行き過ぎた進歩と発展により生み出された汚染された環境など私たちの暮らす世界には、個人のレベルでは解消することが困難な健康を害する事柄があまりにも多く存在しているのです。
そこで私たちには、少しでもその生活の質(QOL)を向上させるための個々個人の努力と自覚が必要とされているのです。
しかし当然のことながら一般の多くの人々は健康医学に関する知識をあまり持っていません。
でも医療的知識の希薄さと疾病の間には密接な関係が存在するのです。
日常の中において無意識になされる食事や睡眠などの不適切な自身の生活。
それこそが生活習慣から引き起こされる様々な症状や病気の原因なのです。
『イアトリズム』は、医学を基礎とする各人の保健にまつわる知識の向上をめざすことで悪い生活習慣を未然に回避し、病気の罹患率(病気になる確率)を大幅に下げ、少しでも多くの人に健やかな日常を送っていただくことを最大の目的としているのです。
イアトリズムの概念は『イアトリズム憲章』に掲げられる、精神の安定および日常の「食事」「運動」「睡眠」という三つの柱を適切な状態で行うことを基本としていますが、それは心身の不具合を東洋医学で言うところの「未病」の段階で対処することにより健康の維持を可能にしようとするものです。
「未病」とは、現代医学にはあまり見られない東洋医学独特の考え方で「身体がだるい」「食欲があまりない」「よく眠れない」などといった身体の変調に早い段階で気づき、それを正常な状態に戻すことにより発病の抑止をしようというものなのです。
病気になってから治すのではなく、健康な状態を保つことを可能にする医療、それこそが「保健の医学」とも呼ばれる東洋医学の神髄であり、イアトリズムの持つ価値観と深い関連を持っているのです。
東洋医学の代表的な治療法である鍼灸は、崩れた生体のバランスを正常に整えることを目的に、経穴(ツボ)や経絡(ツボのつながり)に刺激を与えることにより治療効果をあげていますが、それには生体に本来備わったホメオスタシス(恒常性)の機能が大きく関与しています。
ホメオスタシスとは恒常性とも訳される通り、恒(つね)に常(つね)である性質のことであり、それは生体が何らかの変化に対し自身の身体を元の正常な状態に戻そうとする生理反応であり、それは自らの力により不具合を回復させる「自己治癒能力」そのものなのです。
東洋医学は、人体を大自然の一部として捉え身体に無理のない、より自然な方法により本来の状態へと戻す治療法と考えることができますが、それは健康にまつわる医学的な知識を増やし、日常の暮らしの中で、より自然に健康を維持しようとするイアトリズムの考える人間本来の在り方や生き方という点で、東洋医学との深い共通点が見出だせるというわけです。
イアトリズムの概念を形作る実質的内容は『イアトリズム憲章』に掲げられる理念に基づき構成されていますが、
その内容は…
「基礎医学」「東洋医学」「専門科目」
…というカテゴリーに分かれ、それらは更に各科目に分かれます。
【基礎医学】
「解剖学」「生理学」「病理学」「衛生学」など
【東洋医学】
「東洋医学概論」「東洋生理学」「東洋病理学」「経穴学」など
【専門科目】
「心理」「食品」「医薬」「美容」「理学」など
それでは、実質的内容の各科目を詳しく見てまいりましょう。
【基礎医学】
解剖学 - 人体の基本的な構造である骨や筋肉・内臓・神経・血管などを学びます。
生理学 - 消化や吸収・呼吸・代謝など、私たちが生きるためのメカニズムを学びます。
病理学 - 腫瘍や炎症・アレルギーなど疾病の状態や一般的に有名な病気の内容を学びます。
衛生学 - 消毒や殺菌・食中毒・感染症など気をつけなければならない衛生上の知識を学びます。
【東洋医学】
東洋医学概論 - 東洋医学の起源や陰陽五行論など東洋医学の歴史や特徴・考え方などを学びます。
東洋生理学- 各臓腑の働きや、気・血・津液の関係性など東洋医学における生体メカニズムを学びます。
東洋病理学- 表裏・寒熱・虚実など東洋医学から見た疾病の種類やその原因を学びます。
経穴学(ツボ) -経穴やその流れである経絡など治療に用いるツボの位置や効果を学びます。
【専門科目】
心理 - 代表的な心理学の療法や用語とその意味を学びます。
食品 - 栄養素や食品群など、その種別や役割を学びます。
医薬 - 主な医薬品の効能や成分・副作用などを学びます。
美容 - 化粧品の成分やその効果および関連用語を学びます。
理学 - 物理・化学など基本的な科学的知識を学びます。
いかがですか、皆さん。
『イアトリズム』の実質的内容がなかなか幅の広い知識に基づいていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
イアトリズムの観念を表すマーク(標識)は『イアトリズムクロス』と呼ばれています。
それは「IATRISM」のアルファベット文字、およびそれを取り囲む4種の幾何学模様によって構成される赤い十字(クロス)により表現されているのです。
赤い色は生命の象徴である血液、および東洋医学において生理機能を担う「気」「血」「津液」の総合的観念を表現したものであり、類似する異なった4つの幾何学的図形は、その生命を有する個々の人々が『イアトリズム』のもつ健康概念へと寄り添い集う様子を図式化したものなのです。
また上下左右においてシンメトリック(対称的)なその形は、医学や医療の万人に対する平等性を示すものであり、その思いが世界中、全ての地域・人々に届けられることを強く願う気持ちを形にあらわしたものであるとされているのです。
つまり「イアトリズム憲章」に基づくその理念の象徴こそが、イアトリズムの標識『イアトリズムクロス』というわけですね。
そしてイアトリズムの理念、すなわち医学を主体とする健康にまつわる知識を豊かにすることにより、平和で穏やかな日常生活の継続を可能にしようとしている人たちは「イアトリスト」と呼ばれているのです。
本来イアトリストは社会におけるイアトリズムの概念基準を総括的に管理運営する組織である「一般社団法人 日本東洋医学協会」が現在準備を進め実施を予定している『イアトリズム検定』に合格しイアトリズムの実質的内容である医学的な知識を修得した者をそう呼称するのですが、広義の意味においては、イアトリズムの理念を持つ人は全てイアトリストであると考えるべきなのです。
医学を主体とする健康にまつわる知識を有する『イアトリスト』の活躍の場としては様々な場面が想定されます。
まず第一に自身および家族や友人など、自分の周りの人たちの健康に留意し、助言してあげることが可能となります。
また職業の場においては医療関係はさることながら、美容・飲食・介護・保育・スポーツジム・健康機器、ひいてはペット産業に至るまで、幅広く健康にまつわる専門アドバイザーとして各々の仕事に役立てることが可能なのです。
それでは、色々な職業の場における代表的なイアトリストの活躍の舞台を一つ一つ見てまいりましょう。
【医療関係】
医療関係の仕事に従事する人には、医師・歯科医師・鍼灸師・柔整師・薬剤師・看護師・理学療法士・公認心理師など、国家資格を有する人の他、それらを支える製薬メーカー・医療機器メーカー・ケースワーカーなど、その職種は多岐に渡っています。
その中において有資格者は、各ジャンルにおいてもちろん高度な医学的知識を有していますが、他ジャンルの知識まで全て知っている訳ではありません。
イアトリズムはそれらを補う知識として、より幅のある医療人の育成に役立てられるのです。
【美容関連】
美容関係においては、美容師・理容師・エステティシャン・ネイリスト・化粧品メーカー・美容機器メーカー・健康食品販売・サプリメントなど、医療関係者とまでは行かずとも、それらは全てお客様の安全性の確保が必要な職種であると言えるでしょう。
そこでイアトリズムは、医学的な知識を身に付けることにより、お客様への説明力のアップ、および取り扱う商品や使用する商材・機器などに対する自身の理解力のアップ、また適切な使用法の確保等々、様々な場面においてそれらの職種に大きく役立てることが出来るのです。
消費者・職業人ともにWINWINですね。
【学校・施設関連】
学校・施設関連には様々なものがありますが、そのうち保育所・幼稚園・障害者施設・老人介護施設などにおいては、外傷や病気または食中毒や感染症など、衛生管理はもちろんのこと、適切な医療的対応が即座に求められる機会が多いのが事実です。
またスポーツクラブやテニススクール・ゴルフ教室など、体力作りや運動には筋肉・代謝・呼吸・循環といった医学的知識が欠かせません。
イアトリズムは、子供からお年寄り、スポーツ選手に至るまで、解剖・生理・病理・衛生の知識を役立てることが出来るのです。
【飲食産業関連】
私たちが生きる上において、食事は最も大切なものですが、衛生面などにおいてあまり知識を持たない人がもし、その業務を担っていたとしたら不安でたまりませんよね。
つまり、レストラン・食品製造・食品販売など飲食に関連する産業に従事する人は、常に衛生面に最大の注意を払い食中毒を防止する責務があるのです。
また食材や栄養・消化・吸収にまつわる医学的な知識を多少なりとも持っていなければ、お客様に上手く説明することさえも出来ません。
イアトリズムはそれらの知識を完全に補うことが出来るのです。
【その他の職種】
イアトリズムの知識を役立てられるその他の職種としては、旅館やホテル・スパ・温泉など、人が多く集まる場所に従事する職業の人たちが挙げられます。
不特定多数の人が利用する施設、特に裸になる場所などでは、感染症や食中毒・伝染病の危険性が最も高くなってしまうのです。
つまり消毒・殺菌・滅菌といった衛生管理や微生物に対する知識が最も重要な職種と言える訳ですね。
そして、イアトリズムはそれら様々な場面においてその力を発揮することが可能であり、それこそが真のイアトリストなのです。