イアトリズムの根幹をなす、 心の安定および食事・運動 ・睡眠という三つの柱の内容を詳しく解説しています。
皆さん、おはようございます。
わたくしは、この講義を担当させていただく『イアトリズム学院』学長の「イアト」です。
どうぞ、よろしくお願い致します。
さて、本講義は《『精神』と『三つの柱』》と銘打ちまして…
イアトリズムの中心的観念である「食事」「運動」「睡眠」という『三つの柱』および心が生み出す『精神』の大切さを、その詳しい内容を目的とともに解説させていただく授業となっております。
栄養学的知識や少し難しい化学の話なども出てくると思いますが、心配はご無用!わたくしが解りやすくお話しさせていただきます。
それでは、ご一緒に『イアトリズム』の世界に旅立ちましょう!
私たち人間は、みんな『心』というものを持っています。
「愛する心」「思いやる心」「求め合う心」などなど…
さて、それでは『心』とは、一体どういうものなのでしょうか?
辞書で『心』という言葉の意味を調べたならば、知識・感情・意志の総体とあり、それは「人間の精神作用のもとになるもの」という意味があるのです。
その『心』を扱う学問、心理学において精神分析の祖、フロイトは「人間の心は、海面に浮かぶ氷山のようなものである。
海面に出ている部分が意識であり、海面下にあるそれよりはるかに大きな部分が無意識である」と、述べ人間の心を意識・前意識・無意識の三領域に分類しました。
通常の意識に対し、思い出そうとすれば意識に登るものが前意識。
意識の抑圧されたものが無意識というわけです。
その後、さらにフロイトの弟子であったユングは、無意識を個人の願望や夢の部分である「個人的無意識」と、人類が共通して持つ、より深い層に存在する「普遍的無意識」に分類したのです。
普遍的無意識は、集合的無意識とも呼ばれ、それに相当するものが「ペルソナ」「シャドウ」「アニマ」「アニムス」なのです。
ペルソナとは「自己の外的側面」のことであり、仮面という意味を持つラテン語です。
そしてそれは、自身を上手く社会に適応させるために身に付けた演技とも言える表面的なパーソナリティ(人格・個性)のことであり、会社員としての顔・父としての顔・妻としての顔・彼女としての顔などといった具合に誰もが、その立場や状況に応じた役割を演じているのです。
しかしそれは社会人として不可欠なものであると同時にあまりにもそれが固定化されてしまうと個性の妨げにもなってしまうのです。
それに対し、シャドウは「自己の否定的側面」とも呼ばれるもので意識にとって許容できない自身の影の部分であり、生理的に受けつけない人物という形で夢の中に出てきたり、現実の人間に投影されたりするのです。
(多くの場合は自分と同性)つまりそれは、自分の欠点を無意識的に抑圧した結果生まれてくるもう一人の自分でもあるのです。
またアニマやアニムスは、自身の中にある理想像的異性のことで、アニマは男性における「自己の女性的側面」、アニムスは女性における「自己の男性的側面」とされています。
そして、ペルソナとして選択されなかったものは、シャドウ・アニマ・アニムスとして無意識へと抑圧され、これら普遍的無意識と呼ばれるものたちがバランスよく上手く機能することにより自身を成り立たせているのです。
心の領域を、意識・前意識・無意識に分類したフロイトはその後、心の機能を「イド」「自我」「超自我」の三層構造に分け、それらの相互作用をもって心というものの働きを説明しようとしました。
そのうち「イド」は、精神の奥底にある本能的エネルギーの源泉であり、それは快楽原則に支配されているのです。
快楽原則とは「快を求め不快を避ける」という極めて原初的な機能で「腹がすいたから食べる」「眠いから寝る」などといった具合に本能的な欲望を発現する心の機能なのです。
そしてそれは赤ちゃんとして生まれた瞬間から備わっている心的機能であり、生命体としての人間が生きていくための基本的な欲求と言えるのです。
そしてそれは無意識になされるものであり、発育するに従い、生後約6ヶ月くらいになると外界の現実にそれらの欲求を上手く従わせようとする意識的な「自我」が形成されてくるのです。
「自我」は、エゴとも呼ばれるもので自分を取り囲む社会の規則に自身の行動を適合させようとするものではあるものの、それは自分の思い通りにしたいという欲求でもあるのです。
性欲・食欲・睡眠欲の三大欲に代表される本能的なイドの欲求を現実社会の中で実現可能にしようと働くエゴ。
しかしそれは時としてイドの欲求が強過ぎた場合、その欲求を我慢することが出来ず、行き過ぎてしまう可能性もあるため心には「超自我」と呼ばれる自我を監視し、その欲動に対し検閲的な態度をとる心的機能が存在するのです。
「超自我」は、スーパーエゴとも呼ばれ、俗にいう良心や道徳心に当たるもので4~5才くらいに自我から分化発達してきます。
親のしつけや教師による教育的指導、また友人や社会の中における人間関係により徐々に自身の内面に形成されるものが超自我でありそれがあるからこそ、社会は互いがあまり傷つけ合うことなく人間同士良い関係を築いていくことが出来ているのです。
しかし、一見すると良いことばかりに思える超自我と自我・イドの関係ですが、あまりにも超自我が強過ぎると自身の持つ欲求は過度に抑圧され、心の歪みとして神経症などの疾患を生む原因ともなってしまうのです。
本能としての強い欲求を生み出す
「イド」
そしてそれを社会に添う形で実現しようと働く
「自我」
倫理的・道徳的な立場でそれらを監視する
「超自我」
されど、その力動的バランスが上手くなされなければ精神は決して安定することはなく、それは様々なフラストレーションとして心を蝕んでしまいます。
~ 自己の欲望を満たしながらも社会に迷惑をかけない生き方 ~
大切なのは、自身の心を守りつつ、他者を思う気持ちなのです。
皆さんは、誰か知らない相手に
「君は何者だ?」
と問われたとき、いったいどう答えますか?
多くの人は自分の名前を名乗り、また住所や職業・年齢などを答えるのではないでしょうか。
でも果たしてそれは、あなたという人間を本当に正しく表現し証明することが出来ていると思いますか?
確かに年齢は、あなたの肉体がこの世に生まれてからどれだけ時間が経過しているかを表しています。
しかし名前・住所・職業などはあなたに付属する公的条件にしか過ぎず社会から見た場合、肉体は同じであっても改名したり、引っ越しや転職などをするとその段階で、あなたは別の人間になってしまいます。
では、自身を証明するにはどうすればよいのでしょうか?
それは、形而下(形あるもの)のあなたである肉体だけをみせるのではなく、形而上(形なきもの)のあなた、すなわち精神を相手に理解させることが大切なのです。
見た目ではなく、どんな考えや価値観を持った人間なのか、それが相手に伝わったとき初めてあなたが証明されるのです。
そればかりか、たとえあなたに会ったことがなくても、文通などで長きに渡り交際してきたならば相手には、あなたがどんな人間であるのかが、しっかり伝わっているはずです。
逆に通勤電車などで毎朝会っていても、一度も話したことがなければ相手がどのような人間なのか識る由もありません。
このように「精神」と「肉体」すなわち、心身が対になったものが人間というものなのです。
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アメリカの心理学者エリクソンは、青年期における最も重要な発達課題としてアイデンティティ(自己同一性)を掲げました。
アイデンティティとは「自分は何者で、何をなすべきなのか」すなわち「私は、こういう考えや価値観を持った人間です」という他者に対する自己の意味を表す言葉なのです。
つまり自分とは何なのかを示す唯一の方法は「自己の存在証明」であると言えるでしょう。
そして発達課題とは、人間が健全で幸福な日々を送るための、人生においてぶつかる壁のことなのです。
発達課題の壁は、乳幼児期に始まり人生の各段階において何度も現れます。
つまりその壁を上手く乗り越えることが出来なければ精神の成長が歪んだものとなってしまい神経症や精神障害を引き起こす原因ともなってしまうのです。
アイデンティティの確立は自分の存在意味を見つけるための重大な課題であり、幾つもの発達課題を乗り越え、自分が自分として自身を生きたのち、最後に最も高い壁が目の前に立ちはだかります。
そして、それこそが人生最期の発達課題『死の受容』なのです。
高度に文化が発達した現代。
先進国においては、交通機関・居住環境・電化製品・食品流通等々、様々な分野で快適な生活を可能とする技術や商品が充ちあふれ、私たちの「肉体」は劇的に身体的ストレスから解放されたと言っても過言ではないでしょう。
しかし、その快適な生活と引き換えに受験戦争やリストラ・失業、複雑で希薄な人間関係等々、私たちの「心」は、牧歌的な生活の中では考えられなかったような多大なる精神的ストレスにさらされ、過去十数年の間ずっと自殺者が年間3万人を越えているという悼むべき現実を社会に抱えてしまっているのです。
果たしてこれは、本当に健康な生活と言えるのでしょうか?
精神医学の分野において精神障害を引き起こす要因は、大きく次の3つに分けられます。
① 外因性精神障害
② 内因性精神障害
③ 心因性精神障害
①の外因性精神障害は、ウイルスなどによる感染や薬物または脳の外的損傷によるものがそれに当たります。
②の内因性精神障害は、神経伝達経路の異常や遺伝的要因など、脳の機能障害が原因とされています。
③の心因性精神障害は、社会環境などが精神に影響を及ぼす心理的ストレスが原因とされています。
ここでは ③の心因性精神障害に着目して精神的ストレスがどのような障害を引き起こすのかを代表的な疾患を学びながら見ていくといたしましょう。
【うつ病】
うつ病は、気分障害とも呼ばれ気分の落ち込みや意欲の低下などを引き起こすもので、何事にもやる気が起こらず、不眠や食欲不振・性欲減退など、様々な精神的障害が現れる疾患です。
悪化すると希死念慮(自殺願望)が強くなり自ら死を選んでしまうこともあるのです。
また、うつ病は数年~十年以上と長期に渡って患うことが多く少し状態が良くなっても繰り返し再発しやすいため、家族や友人など、周りの人の理解や気づかいがとても大切になってくるのです。
病理学的には、うつ病は脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどといった神経伝達物質の分泌異常によるものだとされています。
【神経症】
神経症は、心因を元とするいろいろな障害の総称名でそれにはパニック障害・ 強迫性障害・心的外傷後ストレス障害(PTSD)および各種恐怖症などがあげられます。
<パニック障害>
急に息が苦しくなったり、動悸や発汗・めまい・手足の痺れなどが突然、それもごく短い時間のうちに起こるもので死への恐怖をも感じます。
また、うつ病と併発していることも多く、一度でもパニックを起こしたことがある人は日頃、常に不安を抱えながら過ごしているのが通常です。
治療としては、認知行動療法などの精神療法が行われます。
<強迫性障害>
自身の行動や思考が一般に照らし合わせた場合、不合理であることを認識しているものの、強い強迫観念が繰り返し発生するため苦痛や不安を感じ、その強迫観念を振り払うため、1日に極端な回数、繰り返し手を洗うなど儀式的に何度も同じ行為に走るものであり、うつ病やその他の不安障害などを併発していることも多く、自殺に関しての注意は必要となります。
<心的外傷後ストレス障害>
自分や他者が、凄まじい外傷や死におよぶような出来事に直面した場合、それが深い心の傷、すなわちトラウマ(心的外傷)となって、その体験が極度のストレスとなり、生活に支障をきたすものです。
主な症状は、無力感やひどい怯えなどでトラウマとなった状況が再体験されるような感覚を生じるフラッシュバックが起こり発汗や血圧上昇・震えなどを起こすこともあるのです。
健康にとってまず必要なものは何と言っても食事です。
しかし、ただ単に食事と言っても好きなものだけをただ食べるだけでは良い食生活を送っているとは決して言えません。
食事にとって大切なことは、その人に必要な量の栄養を過不足なく摂取する事であり、そのためには食品をよく噛んで食べることや食べる時間の間隔など、いろんなことに気を配る必要があるのです。
そこで、まず皆さんに知っておいていただきたいもの、それは…
「栄養素」「食品群」「適正体重」の3つです。
毎日、三食きちんと食べているからといって、どんな栄養素がどれだけ必要か、またそれらの栄養素が各々どのような働きをしているのかを知らなくては自分には何が必要で何をどれだけ摂取すれば良いのか見当もつきません。
そして、たとえ栄養素の種類を知っていても、どのような食品にどれだけ求める栄養素が含まれているのかがわからなければ何をどれだけ食べれば良いのかがわからないはずです。
そればかりか、自身の身体にとって必要な栄養量がわかっていなければカロリーオーバーとなり太ってしまったり、逆に栄養不足に陥り痩せてしまうかもしれないのです。
ですから、ここでは皆さんにそんな大切な食品や栄養、また体重や肥満についての基礎的な知識を学んでいただこうと思います。
栄養素は5大栄養素とも呼ばれ、それらはエネルギー源となりうる「炭水化物」「脂肪」「たんぱく質」の3大栄養素と、エネルギーにはならないが生命活動を円滑におこなうために必要不可欠な物質「ビタミン」「ミネラル」に分かれます。
それでは各々の栄養素を順に詳しく見てまいりましょう。
〈炭水化物〉
ごはんやパン・イモなど主食になる食品に多く含まれる栄養素で糖質とも呼ばれ、通常の食生活ではエネルギー摂取量の半分以上を占める栄養素です。
消化の過程でブドウ糖(グルコース)に分解され主にエネルギー源の中心的役割を担っています。
〈脂肪〉
バターやラード・食用油などに多く含まれ、皮下や内臓の脂肪組織としてエネルギー貯蔵の役割を果たすとともに、その大部分を占めるトリグリセリドは、脂肪酸とグリセリンに分解されてエネルギー源となります。
また脂肪は脂質とも呼ばれ、そのうちコレステロールやリン脂質は細胞膜の構成成分としても重要な役割を果たしています。
〈たんぱく質〉
肉類・魚・卵などに多く含まれる栄養素で分解されアミノ酸となって私たちの筋肉や内臓、血液などを作る原材料となる他、エネルギー源としても利用されます。
また、その約20種類あるアミノ酸のうち8種類は、体内で合成できないため必ず食品から摂取する必要があり、それらは必須アミノ酸と呼ばれています。
〈ビタミン〉と〈ミネラル〉
各種のビタミンやミネラルは、1日に必要な量はわずかですが神経機能や循環・代謝・免疫・生殖などに関与するため、生命活動には欠かせない重要な働きをしています。
そして必要なビタミンやミネラルの種類はとても多いため食品から摂取するには偏らない様々な食材を使った食事が大切であるとともに、過剰症や欠乏症を引き起こさないために過不足のないようにしなければならないのです。
またビタミンは、脂溶性の「A」「D」「E」「K」と水溶性の「B群」「C」に分類されますが、脂溶性のビタミンは体内の脂肪組織に蓄積されやすいため過剰症が起こりやすく、逆に水溶性のビタミンは摂取しても蓄積されずすぐに排泄されてしまうため常時必要量を摂取しなくてはいけません。
そしてビタミンが有機物の化合物であるのに対し、ミネラルは鉄(Fe)や亜鉛(Zn)など無機質の元素そのものです。
さて皆さん、栄養素の大切さがお分かりいただけましたか?
いくつもの栄養素が、各々いろんな作用や働きを持っていることに対し『食品群』という考え方は、人体にとって必要なそれらの働きがどのような食品により得られるのかを知ることを目的に作られた概念です。
そしてそれは目的・作用別に6つのグループに分類されています。
【第1群】
主に〈たんぱく質〉の供給源魚・肉・卵・大豆など筋肉や骨を作りエネルギーともなる食品。
【第2群】
主に〈カルシウム〉の供給源牛乳・小魚類・海藻など、骨や歯を作り、身体の各機能を調整する食品。
【第3群】
主に〈カロテン等〉の供給源にんじん・カボチャ・ほうれん草・小松菜など、皮膚や粘膜を保護し身体機能を調整する食品。
【第4群】
主に〈ビタミンC〉の供給源大根・はくさい・リンゴなど、免疫力を維持し身体機能を調整する食品。
【第5群】
主に〈炭水化物〉の供給源ごはん・パン・砂糖など、エネルギー源の中核をなす食品。
【第6群】
主に〈脂肪〉の供給源食用油・バター・マヨネーズなど、エネルギー源となる食品。
如何ですか皆さん、各グループの食品とも、それぞれに働きや目的があり、どれが欠けても健康を維持することが困難になるということが、おわかりいただけたのではないでしょうか。
私たちが日常食事をするとき、ただ空腹を満たすだけではバランスの取れた食事にはなかなかなりません。
出来るだけ多くの種類の食品を必要量、食べることが大切ですが、毎日の事となるとそれを継続することは結構むつかしいですよね。
ですから、そのような場合には1日の食事の中で、これら6つのグループからそれぞれ1つ以上の食品を選んで食事をしていただくと良いのです。
そうすると、おのずからその日の食事は栄養バランスの取れたものになるよう『食品群』は考えられているのです。
そして毎日同じメニューではなく、一週間のうちにいろんな種類の食品を摂取することが出来たならば栄養バランスは更に良いものとなるでしょう。
特に成長期のお子さんや老人においては、栄養バランスの崩れは取り返しのつかないものにも繋がります。
出来るなら健康は毎日の食事から手に入れたいものですよね。
そして、それこそが「医食同源」を理解している『イアトリスト』としての自覚なのです。
私たちが健康を維持する上において身長と体重のバランスはとても大切な要素です。
もちろん遺伝的なものも含め、体型にはかなりの個人差があるものですが、健康の目安となる『適正体重』を知っておくことは自分の状態を認識すると同時に、普段どのような日常を過ごすべきかを考えるためにも絶対に必要なことなのです。
そして各人の活動量からは、その人に必要な1日分のカロリーを算出することが可能ですから、それに合わせた食生活や運動を行えば健康な身体を維持することが出来るというわけです。
では、まず初めに『適正体重』を算出するために必要なBMI(Body Mass Index) という肥満度を測る指針から見てまいりましょう。
BMIは一般に「体格指数」とも呼ばれ自身の体重[㎏]を身長[m]で2回割ることにより算出することが出来ます。
【 BMI= 体重[㎏] ÷ 身長[m] ÷ 身長[m] 】
ex) 体重 50kg 身長160cmの人の場合
BMIは、 50 ÷ 1.6 ÷ 1.6 = 約 19.5
そして、それにより得られた数値を、次に示すBMIの判断基準に照らし合わせると、自分の体格の状態(肥満度)がわかるというわけなのです。
肥満度は「標準体型」を基本としてそれ以下の「痩せ型」、そして「肥満1度」から「肥満4度」まで6段階に分類されています。
【 BMI判定基準 】
痩せ型 18.5未満
標準体型 18.5~25未満
肥満1度 25~30未満
肥満2度 30~35未満
肥満3度 35~40未満
肥満4度 40以上
さて、あなたのBMIは幾つになったでしょうか?
研究結果によると、BMIの数値は[22]前後が最も肥満に関連する病気になりにくいとされています。
そしてこれらは成人における判定基準でありBMI[25]以上が肥満と判定されますが、BMIがたとえ[25]以下であったとしても、ウエストが男性なら85cm以上、女性なら90cm以上である場合、それはメタボリック症候群である可能性が高く、内臓脂肪が過剰であることが推測されるのです。
しかし前述の通り、体型や体格は、かなりの個人差のあるものですから、あくまでもそれらは一つの目安として考え、ある程度の幅は設けても良いと思います。
では、ここからは自分にとっての『適正体重』がどのくらいなのかを1日に必要なカロリー数とともに見てまいりましょう。
『適正体重』は、身長の2乗に[22]という数字を掛け合わせることにより算出されます。
そしてこの数は最も肥満に関連する病気になりにくいとされるBMI値[22]が用いられているのです。
【 適正体重 = 身長[m] × 身長[m] × 22 】
しかし適正体重を維持するためには各人に応じた一日に必要なカロリーを把握することが欠かせません。
なぜなら、人は職業や日常の活動の仕方など消費する熱量が全く異なる生活を送っているからです。
そこで、ここでは人々の生活を活動の程度により次の4つのレベルに分類し、それぞれの活動に必要な1日のカロリーを示しました。
「軽度な活動」
一般事務・技術者 、また幼児のいない主婦など。
25〜30Kcal/kg
「中程度の活動」
製造業・サービス業、また幼児のいる主婦など。
30〜35Kcal/kg
「重い活動」
農業・漁業・建設業など。
35〜40Kcal/kg
「超重労働」
サッカーや野球・テニス等、主にスポーツ選手など。
40Kcal/kg 以上
つまり、自分に該当する生活レベルを判断し、その体重1kg当たりの必要カロリーを自身の身長から弾き出した適正体重に掛け合わせることにより、普段の生活に必要なエネルギーを知ることが出来るというわけです。
ex) 適正体重50㎏、一般事務の人の場合
50kg × 25~30Kcal/kg = 1250~1500Kcal
こうして得られた一日に必要なエネルギーを基準に、私たちは各食品群から食品を選び、バランス良く様々な栄養素や水分を摂取するとともに、その必要量を考え、適切な食事を摂ることにより健康的な肉体を維持し続けることが可能となるのです。
健康を考える上において、絶対に食事と切り離せないものは日々の運動です。
運動は基礎代謝とともに食事で摂取した栄養素をエネルギーに変換するばかりではなく、身体を支える筋肉や骨を強くし、また心肺機能や各内臓の働きをも向上させる能力を持っているのです。
ここでは、私たちが活動するためのエネルギーが身体の中でどのようにして作られ、そしてそのエネルギー代謝に運動がどう関わっているのかを運動の種類とともに詳しく見てまいりましょう。
ちょっと、ややこしいしい化学のお話しや初めて聞くと思う物質の名前など、少し難しいかもしれませんが一緒に頑張りましょうね。
すでに学んでいただいた通り、エネルギー源となりうる栄養素は、三大栄養素の「炭水化物」「脂肪」「たんぱく質」ですが基本的にはまず糖質である炭水化物と脂質である脂肪が、主にエネルギー代謝に利用されます。
そして、私たちの身体には複数のエネルギー産生システムが備わっていますが、どの栄養素を利用するとしても、運動の担い手である筋肉が直接使うエネルギー源はATP(アデノシン三リン酸)というそれらから作り出された物質であり、そのATPが代謝されていく過程でエネルギーが生み出されていくということだけは共通しているのです。
ATP(アデノシン三リン酸)はアデノシンという物質にリン酸基が3つ連なってくっついた化合物で、安静時には筋肉内に貯蔵されています。
そして運動時にはそこからリン酸基が1つずつはずれエネルギーが生み出されるという仕組みです。
ATP(アデノシン三リン酸)からリン酸基が1つはずれるとADP(アデノシン二リン酸)となり、約 7~8 Kcal/molのエネルギーが産生され筋肉の収縮を可能にします。
しかし筋肉に貯蔵されているATPは少なく運動を始めるとわずか数秒で枯渇してしまいます。
そこで私たちの身体にはATPを再合成する機構が備わっているのですが、それには3系統あり〈CP系〉〈乳酸系〉〈有酸素系〉という、それぞれ特徴的なシステムが存在します。
そしてその反応には、酸素を使うものと使わないものがあり、それぞれ「好気的」「嫌気的」と言う表現がなされます。
〈CP系〉
最も早くATPを供給するシステムで、筋肉内にあるクレアチンリン酸(CP)が、クレアチンとリン酸に分解され、ADPとそのリン酸が結合することにより、ATPが再び合成されるという酸素を使わないエネルギー代謝過程です。
しかし、筋肉内に貯蔵できるクレアチンリン酸の量は少なく、これもまたすぐに枯渇してしまうため、その運動は十数秒の間しか続けることが出来ません。
重量挙げや100m走 など、短い時間に大きな力を出す運動をするときに働き、それらは無酸素運動と呼ばれています。
〈乳酸系〉
CPが枯渇したあとに、筋肉や肝臓に貯蔵されているグリコーゲン(糖質)を分解して、ATPを再合成するエネルギー代謝過程ですが、それには「嫌気的解糖」と「好気的解糖」があり、乳酸系はそのうちの「嫌気的解糖」による合成過程をさします。
グリコーゲンは本来、酸素と完全に反応すると、二酸化炭素と水に分解されますが、400m走など中程度の運動は無酸素運動であるため、酸素が不足してしまい「嫌気的解糖」がなされた結果、乳酸という疲労物質が生じてしまい、それが筋肉内に蓄積されると数分で運動が出来なくなってしまうのです。
〈有酸素系〉
その字の通り豊富に酸素を用いてATPを再合成するエネルギー代謝過程で「好気的解糖」によりグリコーゲンが分解されるため乳酸が生じず、長く運動を継続することが可能です。
そして有酸素系は糖質のみならず、脂肪も用いてたくさんのATPを作り出します。
運動を始めると、まず糖質が代謝されていきますが、数分経つと脂肪も代謝され始め、20分を過ぎたあたりからその割合は脂肪が中心になると言われています。
ジョギングやマラソンなどといった有酸素運動と呼ばれる継続した負荷の軽い運動がこれにあたります。
如何ですか、私たちの身体はこのようにして食事から得た栄養素をいろんな方法でエネルギーに変換し活動を行っているのです。
運動は、大きく二種類に分類されますが、それら「有酸素運動」と「無酸素運動」の違いは、息をするしないではなく、ATPの再合成に酸素を「使うか」「使わないか」の違いなのです。
またそれは「緩やかな継続する運動」と「短い時間に大きな力を出す運動」の違いでもあり、もちろん私たちは普段の生活の中で気付かぬうちにそれらを使い分けて活動しているのですが、健康のために必要なことは、その負荷の量と強さを考えることなのです。
病気などで寝たきりの人でない限り起きている間、私たちは歩いたり、物を持ったり、作業に従事するなど、常に何かしら身体を動かしています。
もちろん、それらも運動であることは事実ですが、日頃の生活における運動量は、年齢や職業・趣味などにより、かなり個人差があるのが実情です。
ですから私たちは、自分の置かれた環境やその状態に対して、足りない部分を補うことを目的として、日常生活の動き以外にウォーキングやジョギングなどの「有酸素運動」および、腕立て伏せや腹筋運動・スクワットなど、といった「無酸素運動」を意識的に取り入れることが大切になってくるのです。
特に「有酸素運動」は健康を維持する上において多くの効果が期待できる運動ですから、生涯続けていくことが望ましいのです。
「有酸素運動」は、何と言っても私たちの心肺機能を格段に高めてくれます。
心筋を発達させることにより全身の血液循環を改善・促進するとともに呼吸筋を強くし肺の酸素摂取能力を向上させ、外呼吸・内呼吸をスムーズかつ効率的なものとします。
それにより平常時の心拍数や血圧の低下がはかられ動脈硬化や心筋梗塞などといった冠状動脈疾患の発生率を大きく低下させることが可能になるばかりではなく、骨格筋中の毛細血管の新生を促し、マラソン選手のように持久力のある筋肉へと身体を変化させていくのです。
また中性脂肪や悪玉コレステロールの値を引き下げ、高血圧や肥満を防止し、善玉コレステロールを増やしていく効果もあるのです。
それに対し「無酸素運動」は、俗に言う筋肉トレーニングにあたるもので、ダンベルやトレーニングマシンなどで大きく強い負荷を筋肉に与えることにより骨格筋を増大させることが可能となります。
その結果、基礎代謝が上がり熱がたくさん産生される太りにくい肉体が作られていくのです。
また骨においては、衝撃ともいえる強い負荷がかかることにより、カルシウムの沈着が促進され、骨密度が高くなり、骨粗鬆症が大幅に抑制される効果が期待出来るのです。
どうですか皆さん、食事とともに日常の運動がいかに私たちの身体を正常に保つことに関与しているのかが、ご理解いただけたのではないでしょうか。
でも、それは一時的なものでは意味がありません。
やり方にもよりますが「有酸素運動」の能力は半年ほどのトレーニングで15~20%上昇するとされていますが、逆にたった1ヶ月ほどのトレーニング中止で能力の減退が始まり、2~3ヶ月経つと完全に元に戻ってしまうとされています。
精神不安や抑うつ症状にも効果があるとされる運動。
出来ることなら、一生死ぬまで心身ともに健全であり続けたいものですね。
「人は、なぜ眠るのか?」
この問いに対する答はまだ完全には解明されていませんが、睡眠中における体内の変化やそのメカニズムについては、かなり詳しくわかってきました。
もちろん人だけではなく、犬や猫・魚など、そのリズムやパターンは違っても活動と睡眠を繰り返しながら生命を維持しています。
人においては、人生の 約1/3 もの時間を占める睡眠。
きっと睡眠は私たちが生きる上においてとても重要な働きをしているに違いありません。
いったい睡眠とは、どのような役割を果たすものなのでしょうか?
私たちは起きて活動している間に色んなものを見たり、聞いたり、考えたり、また食事を味わい、運動をこなすなど、様々なことを意識的に行っています。
そしてそれら情報の処理や思考・思惟活動にまつわることは、脳が一手に引き受け、総括的に全てを担っているため脳自身はその温度がとても高く熱い状態となっているのです。
ですから私たちはフル回転している脳のオーバーヒートを防ぐため睡眠により脳をそれらから解放し休ませようとするのです。
しかし、脳は睡眠中でも休んでばかりいる訳ではありません。
起きている間に見聞きし経験した、ありとあらゆるバラバラの記憶を整理整頓するとともに、取捨選択をおこない、長期記憶へとつなげるための作業もこなしているのです。
またその際、つらい思いをしたことや嫌な気分になったことなどは極力、短期記憶だけにとどめ、捨てることの出来るものは廃棄し、心や精神が壊れてしまわないように日々メンテナンスをしているのです。
でも、簡単に忘れることが出来ない強い悲しみや驚きなど、強烈な印象が心に刻まれてしまった場合には、それが「トラウマ」となり心的外傷後ストレス障害(PTSD)や、うつ病などを引き起こしてしまうこともあるのです。
また睡眠は、自律神経系・内分泌系(ホルモン)とともに脳だけではなく、起きて活動することにより傷ついたり、壊れたりした皮膚や筋肉など、身体各部の細胞を再生・修復するとともに、低下した免疫力を回復させる働きも持っているのです。
そして、これら「脳の休息」「記憶の整理」「細胞の再生・修復」という3つの睡眠による作用は〈レム睡眠〉と〈ノンレム睡眠〉という二種類の睡眠パターンにより毎晩リズム良く行われ、私たちはその心と身体を健やかに維持し続けているのです。
それではここからはその〈レム睡眠〉と〈ノンレム睡眠〉について詳しく学んでいくといたしましょう。
人は寝ている間、ずっと同じ状態で睡眠をとっている訳ではありません。
個人差はありますが、約90分くらいの周期を持って「レム睡眠」と呼ばれる浅い眠りと「ノンレム睡眠」と呼ばれる深い眠りを一晩に4~5回繰り返しているのです。
レム(REM)とは、Rapid eye movement の頭文字を取ったもので「早い眼の動き」すなわち〈急速眼球運動〉と訳され、ノン(Non)は、その否定形です。
人は睡眠に入るとまず、深い眠りである「ノンレム睡眠」が始まり体温が1度くらい下がります。
これは脳が冷やされ最も休息している状態であり、思考や思惟活動が完全に停止しているとともに、夜間道路工事のように昼間の活動で傷ついた身体の修復がハイピッチで行われている時間でもあるのです。
この間、人は夢を見ず、寝返りを何度も繰り返し血液の滞留を防ぎ循環を良くしようとします。
そして一定の時間が経つと徐々に体温が上がり始め浅い眠りである「レム睡眠」へと移行していくのです。
「レム睡眠」は、寝ているにもかかわらず、脳が活発に働いている時間で、脳神経(Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅵ)により脳と直接交通している眼球がその脳の活発な活動に影響され、目をつむったままグルグルと高速で動き回る状態となるものです。
この間、脳は昼間に見聞きし経験した様々な情報を整理し、取捨選択するとともに精神のケアも同時に行っているのです。
身体は完全に休息しているためほとんど動かず、夢をたくさん見ているのがこの時間です。
そのため、この時に何らかの理由で目が覚めてしまうと …
「いっ、意識があるのに体が全く動かない…」
という不思議な状態になってしまうのです。
そう、これが俗に言う『金縛り』です。
睡眠は、本来このように整然とした時間的サイクルを持っているものですが、それは年齢によってある程度変化します。
小さい子供や赤ちゃんは、深く長い睡眠を必要としますが、それは「ノンレム睡眠」により身体の成長を促し「レム睡眠」によって脳の発育を促進させることが不可欠であるためです。
特に入眠後すぐの90分くらいの間は、成長ホルモンがたくさん分泌されるため、睡眠の中で最も重要な時間であると言えるでしょう。
また成長ホルモンは、赤ちゃんのみならず、身体の成長しきった大人においても分泌されるため、その時間は代謝が促進され、身体の各所が修復されていくのです。
しかしそれが歳をとり老人になるとその機能が衰える他、夜間頻尿なども現れてくるため「ノンレム睡眠」の割合が激減するとともに「レム睡眠」のリズムやサイクルも不調をきたすため、どうしても睡眠が浅く質の悪いものになってしまうのです。
そのため昼間もつい、ボーっとしてしまい、うつらうつらと居眠りをしてしまうことが多くなり、夜また浅眠になるという悪循環に陥りがちなのです。
心と身体の健康を私たちの意識しない所で守ってくれている睡眠。
叶うなら … 一生、不眠という言葉を知らず、ずっと心地よい眠りとともに夜を過ごしたいものですね。